最後のトリはMoranとなる。会場全体を見渡しても、やはり人はいる。
よくよく考えれば、夏期休暇もあって会社関連で都合がつきやすいのかもしれない。
Moran物販で取り扱われているフラッシュリングを身につけたファン達が大勢いる。
しかし、自分の中で注目すべき点は俺以外にも前列で暴れる男性ファンが増えた点だった。
女性ファンが占めてはいるが、こういった男性が前に来る気持ちを大切にしてほしい。
差別を勝手に生んでいるのは俺達ファン側、彼らは女性も男性も同じファンとして扱ってくれるわけなのだから。
… … …
会場が暗転する。SEは「Escort」だったのかは覚えていない。
しかし幕が閉じられた状態で聞こえるのは、Hitomiの語り。内容は「闇」。
幕が開き、四人は「同じ闇の中で」を奏でる。
HEROINE時の衣裳を身に纏い、空に絵を描く指揮者のように動かす。
「確かなものは この塞いだ世界の中に一つ
だからさ、笑って 伝う温度を信じてる」
誰かが泣き、何かが崩れる想いを代弁するかのようにHitomiの慟哭が会場に響く。
好意が憎悪に変わり、傷つけ、後悔する弱々しくも優しい人達。
世界中の誰かが死に、その瞬間に遠いどこかで産声をあげ、生きる生命の循環、
生きるということを優しく歌うHitomi、
慟哭の意味は歌詞を照らし合わせば、この演出の深さを感じる。
そして「マニキュア」、生命の流れを組み、生命が枯れた先にある生誕の唄、「ハーメルン」へと流れる。
真っ赤な照明の中、どこかサイバーな同期音を流し、昂揚させる人気曲だ。
今回も、真悟(ex.Sugar)が代理Bassとして演奏しているが、サポートの垣根を越え、楽器隊も煽る。
終盤ながらも狂気的なノリを見せ、熱気が充満したところでMCへ。
「この中で、海にいく人いる？
俺さ、このシーンが好きな人たちって海に行かないイメージがあるんだよね、俺も含めて。
俺はギャル男とかギャルが苦手なんだ。怖いもの知らずなところとか、
そういった点では俺と同じかもしれないが…。ほら、俺も別に怖いものはないしさ。
海には行かないけれど、俺達Moranのバンドには『海』という単語が入る曲があって、
闇深きシーサイドから、夏の終わりのシーサイド、最後は悪戯なスーサイドに変わるこんな曲で、海に行かないか。」
そして始まった、「今夜、月の無い海岸で」
妖しさはあるもののどこか軽快なノリを見せるこの曲。
会場全体で闇に浮かぶ海は見えたのではないだろうか。
そしてそのまま「Stage gazer」へ。今回リリースされたHEROINEに収録されている曲である。
この曲では曲間の間に左右に観客が大移動するノリをするのだが(正式名称不明)、
ライヴのノリを知らない人達も混ざっていたのか、荷物を足下に置いていた人がいたらしく、踏んで惨事に…。
俺も踏んで転倒したが、まぁ…仕方ない仕方ない。
ライヴ終盤まで大好きなバンドを欲する「貪欲なモンスター」の俺達に向けて、
最後は「Party Monster」で締める。フラッシュリングは暗闇を照らし、会場全体は踊り、パーティーとなった。
闇と光を交互に扱い、テーマ性を生んだMoran。楽器隊はステージを去り、Hitomiが最後呟く。
「俺達は、俺達を想ってくれる君達が大切だ。
しかし愛情は時に憎悪に変わる、君達を愛おしいと思う日もあればたまらなく憎くなるときもあるんだ。
だけど一番悲しいのは無関心。俺達に対して何も思わないのなら、嫌ってくれ。憎悪を抱いてもいいから。」
… … …
ファンであったり大切な人であったり、誰かを想う曲が詰まった、アルバム「HEROINE」。
しかし、今ツアーの、ベースのZillがいないことにより産まれた、ファンの身勝手な憶測。
本来大切であるはずのファンという存在への憎悪、好意、いろいろな複雑な感情が混ざったMoranのツアー。
「大切と思っていた存在から攻撃で、傷つかない人はいない」
大切なものを失って、不安と重圧に耐えて活動するアーティスト。
ファンは大切なことは言うべきだが、俺達はアーティストに何を言ってもいいわけではない。
様々な憶測で、大切な物を壊そうとしないで。
自分の憎悪の正体が何なのか、それを冷静に見つめ直せば、その憎悪の正体が一体何なのか、
大切なものを追いかけてきたファンである貴方には解るはず。
・同じ闇の中で
・マニキュア
・ハーメルン
・-MC-
・今夜、月の無い海岸で
・Stage gazer
・Party Monster
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