ベースのエフェクターのかかった音色。
羊水の中をイメージさせるような深さ。アコギの温かみ、七弦エレキの歪み。
ASAGIの力強いヴォーカルが一曲目から物語に引き摺りこむ。
キーワードは"一卵性双生児"。"Phantom"="幻"、"pain"="痛み"。
生き別れた双子の自分の中に残った痛みや叫びを感じるという内容。
ある時に見知らぬ傷跡が残る、尋常ではない現象が起きる。
やがて母から生き別れの兄弟がいることを知る。
思い出の中にいないながらも、自分と繋がる誰かを思う。
知らない人間と繋がり、痛みを共有する…といった内容。
抽象的ではあるが、まるでアーティストとファンとの繋がりの比喩にも感じる。
あなたの心 絆はひとつに 片身に遺ってゆく いついつまでも
あなたと生まれあなたを知らずに生きてきた痛みは幻のようで
「Night-ship "D"」に次ぐ旗振り曲。かなり勢い・躍動感があり、
グルーヴ・ハーモニクス・アダルティを意識したとのこと。
旗を振る速度は速めで、複雑なので練習が必要。
歌詞の内容は、「揺り籠・母体」。
本来記憶に残っていない自分の存在への叫びと、
母体に宿る赤子が産道を通り、産声を上げる工程をリンクさせ、
Dとして、生気を浴び、
求めるべきものを求めるために未来へと突き進む気持ちを表したロックナンバー。
"Fanfare"="虚勢・誇示"と名付けただけあり、迫力があり、
LIVEでは、「産声をあげろぉ!!」というASAGIが煽る。
これには「感情を曝け出せ」という意味であり、
ファンがデスヴォイスをあげて士気を高める。
信じられる者だけ共に来ればいい Fanfare 夜風(かぜ)の吹くまま
旅路の始終はお前が決めればいい 行こう 我が背に乗せて・・・
過去リリースされたDの曲の中で、聴感上、最速リズムを誇る曲。
HIROKIとTsunehitoのリズム隊、ギター陣の刻むようなソロ、
その上でドラマチックに歌い上げるASAGI。歌詞の内容は「大切な人の喪失」。
"太陽"とは"大切な人"を示す。
自分が闇の中にいるからこそ、太陽のおかげで少しでも輝くことが出来た。
しかし、そんな太陽である人が永遠の眠りへと落ち、
寡黙な月となる自分が、悲しみの中、闇夜に吠え、葬儀を行う。
二度と来ることのない、太陽と月であれた二人の過去を胸に、
太陽を葬り、自分自身も深い闇の中に落ちる。
最後の英文は、新世界訳聖書の(Ezek.33:11)にそのまま引用している。
ああ 眠れるとこしえの君 未来を運ぶ忘れ得ぬ人
永久を繋いでみても 二人の日々はもう帰らない
"Leukocyte(ルーコサイト)"="白血球"。
最後の戦いに立ち向かう前の気持ち、
静かに決意する気持ちが神秘性を秘めた綺麗な音となり、
最後の戦いを思わせる迫力のある掛け声のある激しい部分が、
戦いの士気を高ぶらせる。
静と動を巧く使い分けたベースラインを極力活かしたTsunehito曲。
戦いの最中、大切な人を守り抜き、死別する。
何のために戦い、何を誇りにしてきたか、
自分が選択し、大切にしてきたものが間違いではなかったということを、
安堵して笑顔で散っていく姿が切ない。
ねえ 君をやっと守ることができるその時が来たみたい
ねえ 君を過ごしたそのすべてがかけがえのないものだから
ねえ 君が笑えばどんなことより嬉しかった
ねえ 笑って
アコースティックギターとバンドサウンド、
落ち着いたシンプルな構成となっているアダルティな雰囲気が漂った曲。
ASAGIの「Calling me」「Calling you」という何度も呼びかけるような声が、
一つのメロディとなり、リズムとなっている。
これがが非常に心地よく、曲として、のめり込ませる要素として働き、
味わい深さを増している。
遠く離れた思い人に声を届けようと、届くはずのない声を送り、
必要とされたいがために、声を求める気持ちが繰り返される。
孤独の意味が何か理解できますか?
心に触れる声が僕には届かない
誰かの求める代わりにはなれない 僕はここにいる
流麗なギターフレーズと、
重厚でゴリゴリとした骨太なサウンドに逞しさを感じさせるバラード。
Dとしては珍しく男性の心理が描かれた内容。
カードに書かれた「愛してる」…切り札、Card。
雨のジトジトとした雰囲気を出しながらも、
欲しいものに手を伸ばそうとする力強さ、
一途かつ情熱的に求める欲深さを描いた歌詞が、
よりこの曲の大人っぽさを感じさせる。
雨があがれば 霞んでた景色さえも澄んで
汚してしまった一日を 君色に束ねて
想い出が 想い出で 終わってしまう前に
雨音が 雨の調べとなり流れ消えゆく
フラメンコのようなイントロ・アウトロ、
スパニッシュなアコースティックギターと重苦しいバンドサウンドの中、
ASAGIが優雅に舞う今までに無かったテイストの曲。
テーマは「争いの無意味」。
幼馴染と主人公が敵対関係となり、互いに拳銃を構える。
主人公は幼馴染と、これまでの友情を払拭し、
真剣勝負をするように互いに呼びかけあった…はずだった。
勝負の結末は主人公が勝ち、幼馴染は命を落とす。
自分だけが撃ち、幼馴染は撃たなかったのだ。
置き去りにされた自分と、無意味な戦いの結末に、主人公は嘆く。
果実の匂いが、仄かに残る。あのときの香りだ。
届かない果実を、幼馴染と共に力を合わせた思い出が過る。
この曲は、ロマをテーマにした…とのこと。
青い果実…「未熟」…「青二才」という意味を含むことも意識し、
この作品を楽しんでほしい。
なぜ終わらない? 意味のないこの争いの果てには何が残るのだろう?
なぜに揺れる? 僕には掴めなかった 果実の匂いだけ残して
"Humanoid"="<形容詞>人間の形をした、<名詞>ロボット、宇宙人、最古の人間"。
ここでは、「人間の形をしているが心を持たない人間」、
しかし曲が進むにつれて、主人公が心を少しづつ取り戻す。
過去の自分を振り返り、後悔し…これからの生き方を考える。
最後の「…××…」のフレーズには、主人公が完全に心を取り戻し、
呟いた言葉が描かれている。
未来を感じさせるような機械的なノイズ、
テクニカルな技術が盛り込まれたパワー+スピードのある曲。
日々 憧れた空はなぜか赤く燃え上がる
知らず知らず僕は手を染めていた? 尊い命と引き換えに?
・・・さぁ還らなきゃ 叶うなら いつかまた作られる日を・・・
夜を歌うDとしては新規開拓となる、「朝日」を歌ったバラード。
まだ暗闇が残ったような落ち着きから、
太陽が徐々に昇っていくように盛り上がる展開の温かみのあるバラード。
夢さえ見ることが出来ず、闇に落ちた主人公。
やがて大切な人が見つかり、その光を求めるようになる。
本当に大切に出来るのか、何が出来るのかを苦悩する…、
しかし、沈むような暗闇から光が差し込むかのように、
まるで希望が差し込むような光として、隣に大切な人が側にいる今を感じ、
未来へと夢を見る。
巡り来る朝日が天を目指し 僕の元にも
君の為に今 生まれたての夢を見よう
「Tafel Anatomie(解体新書)」という、
今作の核ともいえる部分が強く出たメロディアスナンバー。
この曲は、Dがファンに向けて歌った曲である。
誰かは、誰かに呼ばれ、自分は呼ばれ、自分も誰かを呼んでいる。
抉る(えぐる)衝動に駆られて、自分も相手も傷ついても、
その傷を負うことで痛みを知り、繰り返すことで人は優しくなれる。
ただ、優しくするだけではなく、傷に蹲り、座り込むリスナーの先に、
Dのメンバーが立っていて、そこから声をかけ、手を取り、前進するようなエールを感じる。
メンバー一人ひとりの音が独立して出されている部分が見られる演出にも意味があり、
五つの要素がひとつとなり、優しくリスナーを包むような優しいテイストとなっている。
どれだけ笑みを殺され続ければ こんなにも悲しいほどに
あなたは生きてゆく強さを教えて今度こそ光になれる
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