ハスキーヴォイスながらもその歌詞の女性の優しさを感じさせる慎一郎の声、
昭和歌謡テイストのアルペジオ、「物悲しい」という一言ではなく、
どこか温かみのある、優しい愛ゆえに悲しむ、人間くささが溢れたバラード。
ジュリーで初めて作った曲がこの、「サクラ心中」。
詞は前身バンドとなるホタル(前所属:慎一郎、杏太)の「サクラチル」の対になる内容となる。
サクラチルでは特攻隊に行く青年から家族や恋人に宛てた内容であったのに対し、
「サクラ心中」では、その手紙を受け取り、愛する彼の訃報を聞いた恋人の視点の内容。
桜が散った夏の日の訃報、死ぬのが怖いにも関わらず、
残された者達を守るために殉死することを選んだ気持ち、「生きてくれ」という願いが残された手紙。
帰ってくるはずのない彼を待ち続け、
彼の死を無駄にしないために笑えるように生きてきた。
しかし、生きる目的だった彼を失い、やがて未来を描けなくなる彼女。
そして思い立つ…彼に会いに行こうと、
慎一郎の情景的な歌詞、一つの恋愛物語が映写機でくるくる廻る、
そんな世界が詰め込まれている。
桜舞うこの場所で空見ています
笑える様に笑える様に頑張って来たけれど
笑顔さえ儘ならない 心の置き場を下さい
貴方の後、追っても良い?
メロディは、「サクラ心中」とは違いアップテンポで疾走感がありながらも、
しっかり聴かせるメロディに重点が置かれており、
歌を聴かせるといった核が、十分すぎるほど伝わるライヴ感を感じさせる熱さがある。
ダンボールに捨てられた赤子から始まるドロドロした世界。
奪い合うこと…血の匂い…罪を覚えた子供が見た、しゃぼん玉が昇った最後の空。
慎一郎の「生と死」を意識した歌詞は健在。
舞い上がれ この哀しみよ 七色に光り あの天まで
しゃぼん玉飛んだ 雨上がり 乾いた音で僕が割れた
どうか君の元へ届け あの天を超えて
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my evaluation
ジュリィー始動ということで、第一発目となる作品がこの「サクラ心中」。
慎一郎と杏太のユニットで"桜心中"というユニット名で活躍していたことも関係している(かも)。
一曲目がジュリィーでも健在な歌謡テイストを全面に出した楽曲、
二曲目がライヴ映えするロックサウンドとバランスのよい一枚。
ジュリィーファンに是非抑えていただきたい二曲であるが、
1000円という価格ながらも千枚限定という極少数枚での販売であり既に完売。
しかし、ライヴ会場限定の「飛びの一枚」にも「しゃぼん玉」は収録、
また、2010年、5周年となり、ベストアルバム「響曲集」に二曲とも収録されている。
これからのファン、これまでのファンにもずっと聞ける二曲として存在しているので、是非聞いてもらいたい。
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