物語を語るように妖艶に歌う一志のヴォーカル、そしてサビは全てファルセット(裏声)という演出も見せるなど、
Kagrraが、他のヴィジュアル系バンドとは違うオーラを放っており、優雅な扇子が会場全域に渡って舞う景色は必見である。
女雅のベース、楓弥と真の琴のような和テイストのギターソロなど聴きどころ満載の一曲。
シーケンスもので、映像化出来そうな歌詞描写。
「京に暗雲が立ち込め、アヤカシが現れる」という内容。
賑わう宴の中、女性を艶めかしく襲う、能面を被った鬼。
心を塞ぐように絡む鎖さえも楽しむかの如く、鬼は女性を恍惚の中へ誘う。
やがて歓喜の声は、悲鳴に変わり、鬼は雷鳴とともに姿を現し、宴は修羅場へと変わった。
恍惚の中に落とした女性を傍らに、桜吹雪の中に姿を消す鬼。
女性は目が覚めるものの、心も体も堕ちてしまうことに抵抗は無く、永遠とも思える罪にその身を落した。
歌い踊れ羅刹の 心く心の鎖を絡め
憂いまでもも纏い 見る物を 狂乱の世界へ
闇夜の道を駆け抜けるようなイメージを膨らませるギターが絡み、
白水のドラムと女雅のリズムが映える、疾走感溢れるLIVE定番となった人気曲である。
耽美的ながらも妖怪が走り去るようなリズムは聴いていて気持ちいい。
間奏では、腕を十字に交差させたりする手フリもあるので覚えると一層LIVEが楽しめる。(現在はやってないかも)
音源では、途中、一志の色っぽい溜息がより世界に引き込む効果もあり、聴き所のひとつかと。
歌詞の内容は、鬼遊の唄とリンクする箇所がある。
アヤカシが姫を連れ去るものの、互いに恋に堕ち、その禁忌の恋を描いた物語である。
アヤカシと呼ばれ、忌み嫌われた種族も、「鬼」と呼称され、差別を受けていた時代がある。
その鬼に恋をしてしまい、二人の魂は溶け合い、ひとつとなり、時代の記憶、滅びた種族の一種として残されることになる。
その美しい罪に抱かれて今 憎しみを消し去り
そう禁断の恋に舞う
これも魔笛と並ぶ定番曲。メンバーそろっての足踏みが、印象的。
リズム隊の強く叩きつけるような音から、一気に空に舞い上がるようなサビのメロディ。
歌詞もこれまたシーケンスもの。
映像の一部を切り取った描写になっており、化け物の鵺が暗雲立ち込める京に姿を現し、
美しき女性を狙う…という内容に見えるが、
この鵺、おそらく、妖怪ではなく、肉体が不完全な人間の姿から、「鵺と呼ばれている人間」だ思われる。
月が闇に呑まれ、真っ暗になった瞬間に京から攫うという場面。「鬼遊の唄」の直前あたりの場面か。
不完全な姿を呪うも、掌を重ね、怯えず、鵺の中にある悲しみを共感する女性を攫う。
雪の様な この躯 滲む程 激しく 狂おしく 抱きしめて
悲し気で 朧げな 哭き声が 命の 息吹を 消し去るまで
浮遊感がありつつも沈んでいくような仄暗い、どこまでも堕ちていくようなバラード。
「死んでいることさえ気付かない者の心情」を歌い上げ、
一志の囁くような声から張り裂けんばかりに振り絞るギャップが聴き所である。
本当に死んでいるのか生きているのか、肉体はどうなるのか、魂は_____
鵺を愛した女性が死に向かい、枯れた感覚が残るもののただただ浮遊し、
どこに辿り着くかもわからず呑まれて行く様子…それが「死」の感覚を表現している。
揺れて心も今に溶けて塵の一つに薄れても
彼方に見えた薄く白い光求め再び交わる何時の日か
「あさきゆめみし」と読む。「来世でもずっと一緒に、、、」と男女互いの心理を歌い上げた曲で、
一志の男性的なボーカル、女性的なボーカルが交互と声を効果的に使い、男女が互いの想いを告げる描写に成功した名曲。
より背景描写がたくみに表されており、このミニアルバムの名曲の一つである。
リズムも三拍子だがバンドサウンドがそう聴こえさせないという、新境地が出た曲。
情景としては源氏物語の、帝と桐壺の更衣の死別のシーンにリンクしているところがある。
かぎりとて (定めの時が来て)
別るる道の 恋しきに (別れていく道の悲しさの中で やっと今気付きました…)
いかまほしきは (行きたい[生きたい]と願っているのは…)
命なりけり(命の道の方だったのですね…)
愛する者こそ、死に急ぐ儚さに魅せられ、時代が流れるうちに、ようやく「死」の時が訪れた。
終焉を迎えた先にいるかつて愛したあの人がいる約束の地に魂が昇っていく鵺のシーンであると予想する。
死へと向かいつつも、その気持ちは喜びにあふれている。孤独ではなく、永遠の共存を願い、死へと向かう。最高の死。
唯微笑み浮かべ 静かに息をとめて 約束のあの土地へ 揺らめくまま
彼方まで広がる 薄雲の中へ 光に導かれて 揺らめくまま
女雅のチョッパーベースから始まり、ノイズ交じりの音から弾けるように始まる曲。
悲しくも綺麗な和のメロディがバンドサウンドでも伝わる。
歌詞の内容は、「死んだはずの愛しき人を探し徘徊する鬼」。
人を想う心は時として人を鬼とする…主人公である鵺は、死んだはずの恋人を求め、墓を暴く、
綺麗な箱の中で横たわる、かつて愛した人。掘り返したことで気づく想い、
どれだけ愛していたかを…この瞬間、鵺は最高の孤独に抱きしめられ、喪失感に慟哭する。
消えて行く黒と共に風が足跡を拭って 今迄で最高の孤独を抱き締めてしまう
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my evaluation
この頃のKagrraのコンセプトは「生と死」で、ミニアルバムタイトルの「鵺」とは、
「様々な物がごちゃまぜになったモノ」という意味合いでつけたらしい。
「鬼遊の唄」以外、全部LIVEでの定番曲になっているので、持ってない人は是非チェック。
一志いわく、「恥ずかしくて聴けない」と言っていたが、俺の中では秀逸な作品。
確かに、今のKagrra,に比べると音質は天と地の差だけれど、
一志の世界観といいメンバーのそれぞれのセンスがこの頃から光り輝いていた。
昔からKagrraが好き!という人の中で、「鵺が駄作」というファンっていないんじゃないだろうか。
実際に調べたことはないけれどもそう想わざるをえない良い作品。
ちなみに1stプレスでは、真っ黒なジャケットで「白い魔手」が収録されておらず、2ndプレスから収録されている。
3rdプレスと2ndプレスを実際に聴き比べたが、
単なるジャケット違いだったので無理して昔のアルバムを入手しても意味がなく、
完全なコレクター収集になるからオススメはしない。
ちなみに、この「鵺」の作品レビューの世界は、俺の中の完全な妄想。
しかし、この作品の中にある死生観とリンクした各曲の物語性は、ぜひ聴いて、歌詞世界を体感してほしい。
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