月に斑雲 紫陽花に雨(つきにむらくも はなにあめ)
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Kagrra,結成10周年YEARを彩る第一弾シングルとして、
"月に斑雲 紫陽花に雨"(つきにむらくも はなにあめ)、
リリースの季節となる梅雨を意識したようなタイトルの楽曲となる。
ギタリスト真による箏で雅に彩られたメロディアスナンバー。
印象としては決して派手ではなく、耳に引っかかるフレーズはない。
ただ、スッと耳に入る優しい音色で構成されており、どこか潤いのある音となっている。
歌詞は昔話をモチーフにしたというより、現代でも言える物憂いな気持ちを描く。
五月雨の空を朦朧と窓越しに見つめ、孤独を抱え、
過去・未来・現代に存在する己の存在を想い、やがて消えてしまいたいという倦怠感を抱く模様を描く。
抽象的な表現で靄にかかっているが、
紐解けば昔も今も変わらない憂いの気持ちを描いた作品となっている。
卍華鏡みたいな繰返す毎日に倦み
掌のうえの 気休めをまた口に含む
時は唯 明日を連れ 容赦無い 光を浴びせ
サビと途中のメロのメリハリを利かせた構成となった、"日ノ本"。
タイトルからは一見、右翼派といった思想の歌かと身構えるが、
中身は、「日本人として忘れてはいけない心」。
四季を愛し、その一瞬一瞬の刹那を忘れない気持ちと説く。
過去作品、「徒然なるままに、、、」でも描いていた、幸せの形を、
10周年を経た今も変わらず、あえて再度説いた歌詞となっている。
人は毒も牙も持たず この世界に生を受けるけど
でも なによりも大切なものは
怒りじゃなく 涙じゃなく ぬくもりなのだから
前作「戯曲 かごめ謡」の続編となる作品。
日本の昔から存在する「華一匁」を、
本来の意味+Kagrra,のカラーで染め上げた印象となる。
どこか何度もループものの少しづつ変化していくフレーズと、
少し重みがあるものの雅な和テイストを前面に出す、
インディーズ時代にあったダークさが出ている。
幼い女性の人身売買や、その春を売る模様、
幼いながらも抱く黒い感情と無念の気持ちをふつふつと描く歌詞となっている。
憐れ 牡丹は散る 舞扇 はらり堕ちる
もう 喘ぎ聲は悦びに変貌わらず
季之節のやうに 流れ薙がれて逝く その想いさえも
my evaluation
「Kagrra,」の10周年記念リリースの第一弾シングル。
メジャーデビューしたときも、憂う気持ちを描いたシングルでデビューしたデジャブ感はあるが、
今回の作品も憂う気持ちが全面に滲み出た作品となっている。
ずっとKagrra,を見ている側の立場としては、
前作「四季」と同じ構成を感じ、シングルとして面白みが無い印象を受けた。
リリースの事情やタイアップなども考えるとこういった構成は仕方ないかもしれないが、
一人のファンとしての我儘とするなら、「戯曲シリーズ」単独のシングルや、
四季・日本を憂う気持ちをまとめた「四季シリーズ」といったコンセプトで集めた作品のほうがまだ面白く感じた。
Kagrra,の強さって、何か一つの作品で「こうやりたいんだ!」というものを決めて、
それをもとに丁寧に作っていくやり方のほうがあっている気がするんだ。
もともと、ひとつひとつの作品は丁寧に作る良いバンドなのに、
最近、組み合わせが単調で、良い楽曲を没個性の作品になってしまう傾向が残念でならない。
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