「儚い」と「切ない」、「憂い」そしてどこか「優しい」。
バンドサウンドというよりも、「絵画」で使われそうな言葉であるがこの言葉達が確実に似合うであろう。
Moranというバンドの繊細なアプローチが全面に出ており、
ヴォーカルを際立てた音の構成も手伝って、より言葉一つ一つの刺さり方も増している。
歌詞のテーマは、「枯れ際の向日葵」そして、その裏で奏でられるテーマは、「鬱病による喪失」。
日々、影を背負い、朽ち果てていく大切な存在。霞んでいく姿に、幕は上がらず、声すらも届かない。
仄かに照らされるような優しい光のような曲、Element。
しかし、その裏には、ひとつになることなんて出来ず、解らないまま朽ちていく儚さ、脆さがあった。
Can you feel every sorrow of mine
遥か先を見る その横顔が 僕の知る全てだった
暗闇の中で光る、指輪が舞うアンダーグラウンドなライヴ空間。
この曲でMoranの世界に引き込まれた人間も多くいたであろう、「Party Monster」。
Velo作曲のサイケデリックなダンスナンバーで、
Zillの歪みに歪んだベース音が鼓動を感じさせ、途中に入る色っぽい溜息も演出している。
音で語りかけ、直接的でない、その歌に眠る言葉ひとつひとつが胸を貫く世界。
感覚的なフレーズが多いが、Moranが繰り広げるライヴ空間を歌いあげたような内容となっている。
これまでHitomiの世界観を辿ってきたファンにとって気になる、
ミッキーやミッフィーの単語が散りばめられていたりと、遊び心もある人気曲。
罠巣食う甘き理想地へ腐敗 feel it, お前がMost greed
Party Monster!! Party Monster!! 無頼、あるがままのSpirit junkie
疾走感のあるダークナンバー。ドラムの揺れが激しくトリッキーなプレイもところどころ感じさせる。
笛吹き男の声を演出するZillの声が、よりこの曲をドラマティックに展開させる。
しかし、この曲。一見関係のない、「Element」とリンクしており、
そのリンクの元として、「枯れた向日葵」がキーワードとなっている。
死に逝く姿、暗い影を落した向日葵であるが、そこから種が落ち、
新しい命の息吹がそこに存在することを描いている。目先のイメージとしてはこの曲は確かに暗い。
しかし、前向きでなくても、その暗さの先にある、「希望」を描いた曲であり、
見方を変えることで見えてくるものを歌った曲であるということを感じてほしい。
どこにも曇り無き瞳の中 君が正しく映るわけがない
二人を削り取る濁った雨 その価値も示すから どうか行かないで
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my evaluation
Elementで先述したとおり、このシングルを構成するのは、「Element」と「ハーメルン」。
「枯れゆく向日葵が見た夢」となったジャケットワーク、
喪失、そしてその中に秘められた希望を描いたシングルとなっている。
このシングルがMoranの皮切りとなっており、代表曲が三曲集まった状態となっているが、
Elementに関しては、Hitomiの「完全に形にしないと歌えない」という決断により、リリースも決まっていた。
感想となるが、シングルとしては珠玉の三曲である。
歌詞も、テーマにそった二曲と、ライヴ用の一曲とMoran切り出しとしては良い作品。
しかし、何故かこの三曲だけを聴くと、「物足りなさ」が凄く込みあがる作品となっている。
もっと別の曲も聴きたいという中毒のような症状。解るだろうか。満足しているはずが、足りなさを感じる感覚。
音を大切にするバンド、Moran。限定3000枚は早々に完売し、入手困難な作品となっている…が、
オフィシャルのMyspaceで、フルで聴けるのでそこを利用してもいい。後々、再度リリースを待った方が良いかも。
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