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さらう笛と約束
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SUICIDE ALI/ スーサイドアリ
さらう笛と約束
発売日:2008/03/26
参考価格:¥2,100
価格:¥1,995 OFF : ¥105 (5%)
※この情報は、2010/02/12 20:47のものです。


ヘヴィサウンドとシンセリードが降り混ざったバックサウンド。
妙な表現かもしれないが、Goshiもひとつの楽器となっている印象。
漂うかのようにふわふわとしたメロディを歌う、ヴォーカル:Goshi。
このギャップがどこか癖になる。

仄暗い闇の中、扉を固く閉ざす、
何も望まない枯れた花のように成り果てても構わないと絶望を抱く少年。
誰かが古びた扉に手をあてる 何も見えないはずの道を辿り…。


何も見えない降る夜を 宿すはずの僕の中
棘の道を 素足のまま
いつも君は辿り着いた

果てしなく残酷になれる存在は
古びた扉に そっと手をあてた




CHAINSAW

母体を突き破り、産まれた自分を皮肉った比喩、"CHAINSAW"。
最愛の母の犠牲から得る生を選ぶか、自身の死を選ぶかの二択。

歪んだ愛情を表現するかのように全面に、ノイジィな効果音が響いたミドルナンバー。
ライヴでは何か歯車のようなものをグルグルと回すかのような振り付きもあり、
その様子は何か、真っ赤な母体から手にするチェーンソーで切り破るかのような、
異常な光景を見るかのような感覚にさせる。


今も尚続いている 人格の欠如
あの破れていく感覚を消せず

血しぶきと誰かの憎しみの中に いつも僕はいる


風のslave

[slave]…奴隷。

扉を開き、赤いレンガ道をただ、目的もなく歩く少年。
何も救えないほど非力なのに、どうして頼られるのか、
何も求めていないのに、どうして自分は迷うのか、
何も解らない…しかし、その迷いや卑屈が自分を守りたいだけのためだと気付く。
赤いレンガ道を辿った先には何があるのか?

展開の強弱をつけることで、風の中を漂うかのような表現をし、
迷いを歌うかのような不安定なヴォーカルが情景を引き出している。


樹は僕にささやく 光のない朝に
「キミの思い出とひきかえに 風をあげる」


動脈

ザクザクと刻むヘヴィサウンドと、妖しい空間を漂わせるような音の構成。
"音に酔わせる"という表現がハマる、「動脈」。
Goshiのヴォーカルでさえ、呪文のように語れるかのように不気味さを感じさせる。

自分の中にあった世界が壊され、その身を殺すかのような太陽から逃れるかのように、
自分の周りに暗闇が広がる。生きるという感覚を放棄しても、
生きようとする管、四肢に張り巡らされた動脈。この動脈に流れる血液でさえ、
ジェラートに感じてしまう孤独感。


差し延べる手を拒み 関わりを捨てて
醜い出で立ちで 全てを無くしても

知られずに溶けてゆく日 それでも答えは求められ
昨日までの僕が召される日 天に昇る姿



笛吹童子

「かなしいひと、みーつけた。」

ライヴでは、この子供の声が鳴り響き、始まる"笛吹童子"。
ヘヴィサウンドと笛の音が混ざり、ダークファンタジーな仕上がりとなっている。
ハーメルンの笛吹き男のようをモチーフにしたかのような笛を持ったGoshiが笛を吹くかのように踊り、
会場ではモッシュが発生するSUICIDE ALI の代表曲の一つ。

孤独の享受、自分と同じ苦しみを持った仲間を引き込もうとする笛吹童子。
忘れ去りたい記憶との決別をし、一度笛吹童子に付いていこうとするが、
笛吹童子と出会うことでその悲しい記憶を抱きしめ、辛くても生きていこうと決心する。

笛吹童子はやがてその子と分かれ、また別の同じ苦しみを持った仲間を探す。


わたしの生きた記憶 いつまでも忘れない
悲しみ抜いた強さ そんなキミに逢えてよかった


無人の都会

ラストを締めくくる、SE。
浮遊感のあるシンセとゆったりとしたリズム。
一つの物語が閉じるかのように、しっとりと締める。

無人ではあるがそこにある安堵感のようなものを感じる。




my evaluation



全曲通して言えることが、良い意味で「万人受けしないバンド」。
歌詞や作り込まれ過ぎな世界観は、歌詞を見ない・ルックス重視で見るファンからすると、
気持ち悪く感じるんだろうなぁ…と思ってみたり。(笑)

ヴォーカルの声の質・歌い方だったり、音楽の方向性もB級テイストなので、
本当に好き嫌いがバッサリ別れる作品である。

しかし、もう一つの作品、「受継がれた指輪」と比べるとまだ聴きやすい(はず)。
俺みたいに一曲一曲を解体して楽しもうとする人には面白いバンドかと。
とくに「笛吹童子」は俺が初めてSUICIDE ALIというバンドを生で見たとき、
「なんだこの、独創的すぎるノリと世界観の作り込みは!!」と思ったぐらい。

ちゃんとしたセールスや、アピールをすれば売れそうなんだけどなぁ…、
ヴィジュアル系をアニメ感覚で好む海外で高評価なのはそういったマニアックなテイストがうけているのかな?