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木槿の柩
† No Image†
emmuree/ アンミュレ
『     』
発売日:2008/06/XX

※この情報は、2009/04/30 22:23のものです。


白昼のパラドックス

初期の頃、デモテープがリリースされた作品。
毒々しいドラムと、歪んだギターサウンド。
「幽閉」という言葉が似合うヴォーカル、想による語りやエコー、
シャウトと巡るましい曲展開。
サビでは一変して、聴かせる落ち着いたメロディ。
自然と耳に馴染む優しさと、
複雑すぎる展開という相反する要素が共存した曲となっている。
俗に言う「プログレッシブ・ロック」というのだろう。

「パラドックス(=一般に容認し難い結論を導く論説の逆理)」という曲名から、
歌詞の中には、その結論に辿り着くまでに感じる不快感や歯痒さを「舌の無い蜥蜴」や、
「頭蓋の空洞を違和感をもって満たす脳」といった表現をしていると考えられる。

では、その結論とは何なのか。
「運命の悪戯」としか思えない、望まない悲劇の結末。どこから間違え、どこから狂ったのか。
考えを巡らせても、チラつくのは自己のナルシズムと、そんな自己の否定の繰り返し。
結論にはたどり着かず、痛みを忘れることなく、叫びを閉ざし、考察は浮遊する。


体中刻み付ける衝動に重ね合う憧憬と忘却の自我
廻り廻る現実のパノラマに磔られた剥き出しの神経が軋む音




白妙唇

「白妙唇(シロタエシン)」でいいのかな。
「白妙(シロタエ)」とは4月中旬に咲く白い花のこと、
もしくは、コウゾなどの木の皮の繊維で織った真っ白な布のこと。
百人一首にも「春過ぎて夏来にけらし白妙の〜」とある枕詞。
曲名のせいもあってか、全体的なメロディテイストに和を感じさせる。


希望を見ては死に行く者、潰える希望は更に死に行く者を呼び、
愚かな歴史を刻み続ける。残された、かつて愛した亡骸に想いを馳せる者。
悲しみに生きる人を生み続けるものの、歴史は刻み続けられる。


 白み渡る満目の雪 心も消えなむばかりと
 悲しくも生きて残り或る 命を終わらむばかりなりしを



my evaluation



配布には勿体ない良い作品。しかし配布音源な上に、入手困難。
emmureeは、コアファンが多いためと良い作品として手放したくないのだろう。

対盤の形式では、プレイされていることは確認していないが、ワンマンではプレイされている模様。
初期のemmureeの音源は完成度が高いな。そしてマニアックで一筋縄ではいかない。
「love letter」のようにまとめてリリースされることを希望したい。