初期の頃、デモテープがリリースされた作品。
毒々しいドラムと、歪んだギターサウンド。
「幽閉」という言葉が似合うヴォーカル、想による語りやエコー、
シャウトと巡るましい曲展開。
サビでは一変して、聴かせる落ち着いたメロディ。
自然と耳に馴染む優しさと、
複雑すぎる展開という相反する要素が共存した曲となっている。
俗に言う「プログレッシブ・ロック」というのだろう。
「パラドックス(=一般に容認し難い結論を導く論説の逆理)」という曲名から、
歌詞の中には、その結論に辿り着くまでに感じる不快感や歯痒さを「舌の無い蜥蜴」や、
「頭蓋の空洞を違和感をもって満たす脳」といった表現をしていると考えられる。
では、その結論とは何なのか。
「運命の悪戯」としか思えない、望まない悲劇の結末。どこから間違え、どこから狂ったのか。
考えを巡らせても、チラつくのは自己のナルシズムと、そんな自己の否定の繰り返し。
結論にはたどり着かず、痛みを忘れることなく、叫びを閉ざし、考察は浮遊する。
体中刻み付ける衝動に重ね合う憧憬と忘却の自我
廻り廻る現実のパノラマに磔られた剥き出しの神経が軋む音
「白妙唇(シロタエシン)」でいいのかな。
「白妙(シロタエ)」とは4月中旬に咲く白い花のこと、
もしくは、コウゾなどの木の皮の繊維で織った真っ白な布のこと。
百人一首にも「春過ぎて夏来にけらし白妙の〜」とある枕詞。
曲名のせいもあってか、全体的なメロディテイストに和を感じさせる。
希望を見ては死に行く者、潰える希望は更に死に行く者を呼び、
愚かな歴史を刻み続ける。残された、かつて愛した亡骸に想いを馳せる者。
悲しみに生きる人を生み続けるものの、歴史は刻み続けられる。
白み渡る満目の雪 心も消えなむばかりと
悲しくも生きて残り或る 命を終わらむばかりなりしを
|