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祈り
 
emmuree/ アンミュレ
祈り
発売日:2003/07/04

参考価格:¥ 1,600
※この情報は、2009/05/01 22:23のものです。


手紙

物悲しいアルペジオと、心地よい浮遊感を与えてくれるメロディ。
音としてはバンドサウンドなはずだが、「静」という言葉が似合う空気を纏っており、
結果として、 想のエモーショナルなヴォーカルが映え渡るバラードとなっている。

戦争に向かった主人公。交わした約束を交わせぬまま、
伝えたいことも伝えぬまま、 サヨナラも言えず、死に逝く生命の灯火。
無常にも、既に他界した主人公に一通の手紙が送られる。
手紙を綴るとき、帰ってくると信じ続けていた、恋人からの…。

ひとつだけでいい叶うなら 伝えて・・・・
「大切な人よ 今も 誰よりも 愛してる」と・・・・・


祈り

「手紙」の静から、叙情的なメロディを奏でる、「祈り」。
身体に沁み込む歌詞に含まれた言葉。
闇に差し込む光、決して明るくはないが、どこか強さを感じるのは、
全体のサウンドや想のコーラスの演出のせいだろう。

戦争によって起きた悲劇。しかし、歌詞の主人公は戦争で人を殺めてきた兵士。
千切れた足を探す片目で嗤う少女。
自分が何のために戦い、何を奪ったのかを思い知らされる光景。
背に架かる罪の重さに祈りを込めるも、夢でまだあの光景が思い浮かぶ。消えない。

重く背に架かる罪は祈りへ姿を変えて
胸深く抉る声に導かれるまま
まだ寒い初春の海へ飲み込まれてゆく
眼を閉じて浮かぶ面影に顔を埋め巡る思いに



葬列と×××

emmureeの狂喜的な部分が前面に出たサウンド。
どこかゴシックも感じる曲展開と、想のヴォーカル。
しかしただ、激しいというだけでなく、
その歌詞の中には、「祈り」「手紙」と同質の、仄暗い中にある温かい何かが潜んでいる。

遠い異国の国から届く愛する人の声が聞こえた気がし、目覚めてみると、
そこには荘厳な鐘の音が鳴り響いていた。
葬列の主役は、バラバラとなり肉塊となった彼女自身。
女性は死に逝く肉体と、存在が消滅する感覚を体験する。
大切な人への心残りと、止められない無力感が一層、狂気を際立たせる。

あぁ止まらない覚醒する痛み 脈打つ鼓動を 誰か・・・止めて
あぁ止められない 救いを求める術も無い私を誰か・・・止めて



真実の雨

メロディアスという言葉が似合う、emmureeのストレートナンバー。
闇を孕んだバンドサウンドで格好の良さに意識が先行するが、
この「祈り」に含まれた三曲を経て、「真実の雨」を聴くとその曲の魅力が増す。


真実とは一体何なのか、嘘で蔓延した世界のため、戦争に向かう。
永遠を誓う二人は離れ、異国の地で、銃弾が主人公を貫く。
その銃弾の嵐は真実を含んだ雨のように感じた。死を与えるための。罪を償うための死という真実。


交わした接吻は    I don't ever want to be alone
螺旋を描いて     Finds the truth in what is spoken
悲しみ癒えるまで   I don't ever want to be alone
永遠を描いて     Finds the truth in what is spoken

真実の雨が沈黙の中で僕を撃つ

my evaluation


一度、品切れになったが、現在はOfficialでも入手可能となった作品。
1600円とリーズナブルだが一般店では入手しにくい。
emmureeの作品としてはメロディも取っつきやすく、良い曲が充実しているので十分オススメ出来る。

曲の展開としては、考察するに、「祈り」→「葬列と×××」→「真実の雨」→「手紙」

戦争に向かう男、人を殺すたびに目に焼き付く凄惨たる光景。
許されるはずもないことに気付きつつも、神に許しを請い、祈りを捧げる。

異国の地で戦争に向かった恋人に手紙を送る女性。
しかし戦火に巻き込まれ、彼の声で気づけば既に肉塊となってしまい、
約束も果たせぬまま、意識は無常にも消えていく。

一方、主人公は過去を思い出す。二人で愛し合い、幸せだった日々。
この地の戦争がいづれ終わると信じ、戦うも、死を呼ぶ銃弾の雨が主人公を貫く。
やがて異国の地から手紙が届く。伝えたい気持ちは互いに届かず、時代は流れる。
ただそこに「二人は愛し合っていた」という真実と、「戦争が終わる」ことを願う祈りだけを残して。


余談として、「another story of Garbera」という作品が配布されているが、曲の中身は「手紙」。
しかし、歌詞の中には、別曲「Garbera(「灰色」に収録)」の歌詞が続いており、心情が更に深みを増している。

この作品を通して聴くと、一番凄いのが、何年も経ているにも関わらず、
作品の魅力が劣化しない、今でも十分聴けるほど、充実していることを改めて感じさせてくれる点だ。
これからも良い作品を残してもらいたいものである。