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消せない雨/無知な命へ
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Fatima/ [ファティマ]
消せない雨/無知な命へ
発売日:2004/12/08

参考価格:\1,200  価格:\1,100 OFF : \100 (8%)
※この情報は、2009/01/29 22:55のものです。


消せない雨

かつてこれほどまでにFatimaの曲でキャッチーなメロディを持つ曲は無かった。

素直に聴けるメロディラインを持つLay作曲の「消せない雨」。
曇り空が晴れ空に変わっていく様を音という音で表現されており、
またFatimaと思わせるエッセンスも散りばめられている。

しかし、その曲調とは裏腹に、歌詞はとても皮肉かつ、様々なメッセージも含まれている。

「雨とは涙の象徴である。」

この考えを年頭に置いて、歌詞を見てほしい。
この歌詞には二つの涙に関するテーマが含まれている。

詩人が掬いあげた実話による悲恋。
詩人はその哀れ・悲しみを掬いあげ集め、歌にし、
やがてその詩人の歌は聴く者の涙を買い街中に広がった。

やがてその共感を得た悲しみも「悲しい話だったね」と昇華され、
街中に降り続いた涙雨は、晴上がっていく。
人にとって悲恋とはエンターテイメントの一種となる要素も持つ。
誰も不幸になる人間は居ないように思える。

だが、確実にどこかで、その恋の末路を体験した、

そう、

詩人が題材にした人物、実話のモデルとなった人間がその悲しみを思い出し泣いている。
忘れたいのに、街中に広がり、残り続ける。その涙は日陰で水たまりとなる。

TVで戦火の街を映し、片腕の少女が映り、
募金などの形で涙をお金で買う形となる。
世界中の悲しみが雨雲となって雨(涙)を降らす。

世界中の雨音…涙を見て、それを「可哀想だ!」と涙する人間がいる。
しかし、その涙の雨音の激しさにより、涙する人…その人が、
本来気づくべき…一番近い人間の雨音を、
涙に気付けないまま大雨のような涙に目をやり続ける。

やがて戦火のTVも下火になり、晴れ渡っていく日陰に貯まった近い人により涙の溜まり。
かき消された近しい人の涙と悲鳴は、徐々に自分が知らない場所から染み込んでいく。
気付いて欲しい人間が周りにいるにも関わらず、気付くべきところに気付けていない皮肉の詩。

「雨とは涙の象徴である。」


降り出した雨さえも いつしかは晴れ空になって流れてゆくけど
日陰に残る水溜り 黙って 引きずってた裾に 染み込んでいった




無知な命へ

作曲者は異端ギタリスト、4ge。
セピアがかったシーンを訪仏とさせるようなジャジーかつ渋めの音色を奏でるギター。
過去、「赤い薔薇のスープ」で雰囲気ものを作ったが、これは別物。
全ての音が泣いている。

消せない雨とテーマは同じであるが、これはまた別の雨(涙)である。
涙の後を辿る…、思い出の雨が心を濡らすような歌詞。

憂いなどなく、迷いもない、互いに信頼していた二人。
月日が経ち、「かつて…」と、思い出・過去にすがり今を見なくなってしまっていた。

当たり前の様に ずっと側にいるんだと思ってた

残されて気づく、今の大切な人との距離。
気づき、離れていくことを止めなければならなかったことに対する後悔。

「さよなら」も「ありがとう」も言えず、どう思い出を消化してよいのか、
どこに向かえばいいのか解らないまま、呆然と立ち尽くす。

雨や雨(あめやさめ)…互いに流しあった、幾度と流れたはずの雨[涙]。
その悲しみに耐えきれず、雨で消えてしまった…無知な命。


廻る季節が肌に射す感覚 あの映画の続編 些細なほど残酷 「解る?」




my evaluation



曲調はメロディアスなストレートナンバーと、
ジャジィーなバラードという両極端な選曲の二曲。

だが、「気付けないということ」、
「雨と涙」という根本は似ているものを書いた二曲でもある。
Fatimaとしては音がガラリと変わりつつも良い要素が残ったシングルとなった。

「消せない雨」、「無知な命へ」。
値段も求めやすく、この頃のCDを持っている人は多いと考える。

ただ、「明るい曲」「悲しい曲」「かっこいい曲」「泣ける曲」、
そういった評価も自由だけれど、この歌詞の根底にある皮肉とメッセージに触れ、
近しい人の雨に気付けているか?の問いに答えれるかを試してもいいかもしれない。

再びパッケージを取り出し、その音に身を委ねて思い起こしてほしい。
Fatimaという存在の裏側にある世界を感じて見てほしい。

…あ、無知な命への最後、主人公はどうなったんでしょうね?
本当に命を絶ったのか、どうなのか直接的なことは書かれていない。
ただ、思い出の自分が消えてしまうというのも立派な死ではないかと思う。

過去の自分の死。綺麗な思い出だけで構成された、疑うことを知らなかった、無知な命…と解釈。