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遊歩道
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人格ラヂオ/ ジンカクラヂオ
遊歩道
発売日:2003/11/30
参考価格:¥ 1,575
価格:¥ 1,575 OFF : ()
※この情報は、2009/05/13 01:05のものです。
遊歩道

愛が深まり、失うことを互いに恐れることで愛情の表わし方を忘れてしまった二人。
二人で歩いた遊歩道の終着点、「別離」という照らし出された二人の結末を見るようで、嘆き始めた恋人。

具体的な形にできなくても、
「ただ逢いたい」という気持ちさえあれば、互いの不安を拭い去ることが出来る。
遊歩道、「散歩道」のことであるが、この曲では、その遊歩道の中、恋人に対する想いを再確認するような内容である。

冷たい空気が流れるイントロから、サビにかけてサウンド全体に温もりが漂っていく。
寒々しい降りしきる雨が、あけてくるように。
音色ひとつひとつが柔らかく、これまでダークかつ報われない人格ラヂオの歌詞の印象を払拭した一曲。


見えないものを 見ようてしては もがいてみても
僕は愛の形を示せない 今もきっと 何も変わらずいるけれど


切り札

「女の切り札」。女の切り札は「泣く」ことではなく、泣かないことが切り札。
大切な人が離れてしまうかもしれないという不安と恐怖の中で、自分が強くあれるための切り札を使う。
逆境の中で、大切なものを守るために強くいる、女性の歌。

人格ラヂオの人気曲で、誰にでも聞けてイイと思われるような歌謡曲テイスト。
悠希の切ない歌声が非常にマッチしていて、聴き心地がよく、適度に湿度のある音色が心に沁みる。
これは万人受け狙いってことではなく、
きちんと人格ラヂオ独特の世界観を保ったままでイイと言われるという意味合いで捉えて欲しい。
「きわもの達の果実」ではアコースティックバージョンが収録されており、
そちらでもまたよい雰囲気を漂わせているのでオススメしておく。

涙さえ許されないなら もう少し傍にいて
惨めでも構わないの 少し抱いていて

深い森の中のさなぎ

悠希の透明感のあるヴォーカルと、サウンドの雰囲気が、日差しが差し込む森のイメージを与える。
森のイメージを与えているのはギターのアルペジオと、サビにかけるゆったりと広がっていく構成によるものだろう。

サビで急にストンと音が優しく落ちることにより、ストレス無く聴ける曲となっている印象を受ける。
さなぎとは、「悠希自身」のことで、深い森というのは、音楽ではないだろうか。
消えかけた過去、今、すべてを乗せ、深い音楽、森に閉じ込める。
その森の核となる部分にさなぎがあり、それに触れることで、繊細な悠希の欠片に触れることが出来る。
音楽に対する、想いのようなものを感じた曲。

さなぎの様に柔らかな僕は 壊れやすくて
少しでも握り締めれば それで終わってしまう ほら触れてごらん



my evaluation


この三曲、アプローチは違えど、すべてに愛情が漂っている。
そこに倒錯した世界は無く、自分たちが感じうることが出来る日常に潜む愛情。

また、最後の「深い森の中のさなぎ」には、シニカルなイメージの強い悠希の素直ではないながらも、
触れてほしいという気持ちが見え隠れした気がした。

「証拠」では、ダークかつ倒錯した作品であったため、この「遊歩道」に触れたとき、戸惑いを感じただろう。
きっと購入したけれど、棚に保管し、聴かなくなってしまった人もいるように思える。

しかし、距離を置いて、もう一度、人格ラヂオとして触れたとき、その繊細な世界は変わっていなかったことに気付く。

今思えば、この作品がターニングポイントで、愛情というものが曲中にチラホラ見えるようになったように思える。
ダーク一辺倒が好きな人にはオススメ出来ない。しかし、あえて、こういった世界もあるのだと聴かせてあげたい気持ちがある。