靴音とドアノックの音から始まる、おどろおどろしいダークバラード。
呪術的な妖しさの中、サビでの眞呼のファルセットも色気を漂わせる。
歌詞がとにかく難解で、前半と後半で書き方も視点も変わる。
ママという言葉から、「母親による過保護」の歌詞のように思えるが、
この歌詞は、「置き去りにされた子供が家族を葬る」物語であると考える。
母親が、子供に暖炉で食す青いリンゴ。
子供が毒され、死の世界へと向かうのを確認した後、自分も後を追う。
二人の死後、もう一人の子供がその二人の死んだ光景を目にする。
死の世界へと飛び立つ家族、取り残された子供に残る、
孤独と一緒に連れて行ってくれなかったことによる一つの復讐心。
大切な母親の唯一の願いである「大きな海で見守る」という願いを壊すかのように、
下水へ死体を遺棄するという救われない物語。
私にとって大切なあなたのためにたった一つだけの青いリンゴ
あなたにとって大切な‘私‘のためにたった一つだけの・・・
keinの代表曲、「グラミー」。
ダークなハードロックで、一気に空気を変え、
シャウト有り、ギター・ソロの見せ場有りと、ライヴ映えする展開である。
keinとしてのカッコよさが凝縮されている。
ちなみに、オムニバスでも収録されているグラミーとはイントロが違う。
死刑囚が大勢の観衆の前で、死んでいく様子を描く。
眞呼の煽り曲らしい言葉のチョイスで、アングラ感が漂う危ない歌詞である。
歌詞カードでは意識が昏睡していく様子が見えるように文字がフェードアウトしている。
ああ・・・死刑台の罪人の観覧会ね
のた打ち回る僕に群集の歓声と喝采
蠢く・・・
グラミーがストレート勝負なのに対し、こちらは、変拍子と早口、
ノイズ混じりに展開されるギターソロなど、変則的なエッセンスが満載した曲である。
実は、俺、グラミーも好きだが、こっちの方が好きだったりする。聴いていて面白い。
曲タイトルのように、この曲では、
これまでの残虐な黒歴史をフラッシュバックするかのように、
歴史をなぞるかのように実現していく主人公の物語である。
黒歴史が頭の中を再生していき、最後、精神が汚染され、末路に向かう一本の映画が描かれる。
狂気なものほど 人は夢を見る これもそうさ
一度だけの狂気 壊したところで 変らない 狂人のせいにして
シネマは始まる 月の光 誰のため
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