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Black rain
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9GOATS BLACK OUT/ [ナインゴーツブラックアウト]
Black rain
発売日:2009/02/14

参考価格:\2,700
価格:\2,700
※この情報は、2009/05/03 22:08のものです。

a light

何かを感じさせる回転音から始まる、
静と動を繰り広げられるバックサウンド、
呪文のように英詩を呟く、ryo。
一筋の光が差し込む。「a light」。
「a」と単数系であることから、一筋と予想される。

避けてきた光、自分を音楽という道に呼び戻そうとする九回目の朝に訪れる二人。
「hati」と「utA」。その声を拒み、消えていく二人の姿。
その姿の先にある光。見えなくなってしまった二人のその道の向こう側。
諦めていた道が、光として滲む。
そして気付けば、その光に目を向け…道を共に歩き始めるryoの姿があった。

九回目の朝二人は 見えなくなってしまった
その向こう側 あきらめていた 先が 滲んだ


SALOME

「純真」を意味するユダヤの言葉、「SALOME(サロメ)」。
男と女、獣と人、交互に交差するような声の表現を見せるryoのヴォーカル。
ライヴでは、盛り上がりをビート感と、ストーリーテラーのような演出。
アダルティかつエロティックな世界観を見せる曲の中でも、
紐解いて見える物語は、皮肉と「純真」に満ちた内容である。

人は、生きていく中で、愛する術を形成する。
情熱的に愛する者、淑やかに後を追う者、子が産まれてから愛を強める者、
閉じ込める者、性に溺れる者、破れた愛に執着する者、そして、殺める者もいる。

愛してるだなんて 笑わせないで
叶わない恋は忘れます      貴方の首に誓うわ


in the rain

アルペジオで奏でられるギター、ryoの閉塞された空間で歌う響き。
「チクタク…チクタク…」。時を刻む声。
静かな空間を一気に膨張させるような壮大な広がりのあるサビは、
「綺麗」という言葉に「悲しい」という言葉を繋がらせる響きを持っている。

被爆の後に降る、黒い雨。沢山の人が浴び、死んでいった雨。
言葉なら「運命」、形にならない大きな「何か」…、
その大きな何かに呑みこまれ、生命の灯が消えていく人。それを人は「死」と呼ぶ。

死んでいった大勢の中には大切な人が混ざっていたかもしれない。
逃げ場のない、終わり、死という瞬間。しかし、人はそれを怯え、生きることは出来ない。
「苦痛や悲しみを抱えながら生きていく」
傷を舐め合うのでは無く、全てを享受する生き方。
大切な人の屍を抱え、愛を抱え、黒い雨に打たれ生きていく。
黒い雨という生への障害に耐えるかのように。

伝えて欲しいこの愛を 消えてしまったあの人へ
長い嘘であったなら どれだけの救いになるんだ
途絶えて均しいこの愛は いつか波に呑まれようと 届くはずだ 届くはずだ
僕らはその「今」に生きて死ぬ


moses


降り積もった想いの雨は、海となり、叶わぬ愛に溺れる一人の男を揺らす。


ROMEO

逃げ場の無い奴隷船に揺られる男。離れ離れになった恋人を想う。
冒頭のマシン・ビートと呪術的なテンポを感じさせるryoの声。
その先に広がるのは、ハイトーンヴォイスを中心に奏でられる美しい曲、「ROMEO」。
ライヴでは、ryoの迫真に迫る演技も見せつつ、その世界に引き込む。

「ロミオとジュリエット」を訪仏とさせるテーマであるが、
恋人を想う奴隷である主人公の物語が主であり、
船が沈み、伝えたい言葉・想いすら届けられず、泡沫に消えていく人間を描く。

また、この作品の裏には、現実の奴隷社会も描かれており、
集団に属することで言えない、「苦しい」という本音すらも吐けない、
全うに生きれない、伝えたいことが言えない世界、苦しさのある世界を憂いで歌う。

毒入りの口づけを 現実にもう目覚めないように
伝えたい ありがとうって
沈む船に取り込まれた せめて想いを残したい
愛しているから お願い 生きて この身の分も

headache

「頭痛」という意味を持つ、「headache(ヘデック)」
頭痛というイメージを訪仏とさせるドラムの乱打と、デスヴォイスを発するヘヴィサウンド。
「ROMEO」と同様、ライヴ活動を始めた頃から存在し、温められた煽り曲である。

歌詞カードも少し変わっており、言葉が一面にあふれている。
多すぎる悩み、頭の中に鳴り響く己の悲鳴。歪な形となったその悲鳴を表現している。
最後、数を数えていくうちに、言葉が崩れる。頭の中がその重圧に耐えきれず、押し潰れたように。

感覚口上旋律 夢を見る暗闇で 霧がかった 贖罪に付する弱い影
絡む声高く 纏うのは辛い 頭痛 広がった声に響く腐敗 並べて笑う

天使

日差しの温かささえ感じさせるアルペジオ。
「a light」とは違う、差し込む光というより、複数の光に照らされた光を感じさせる、「天使」。
光の一筋一筋が集まることで、虹になるニュアンスを含めたサウンドである。

柔らかく歌われたこの光にも、やはり人の生き死に、輪廻のテーマが描かれていた。
ライヴの最後に相応しいバラードであり、
ファルセットの部分にはひっそりと、この作品を、
そしてライヴに来てくれる人達へのメッセージがひっそりとあることも忘れず、心に秘めてほしい。

鉛色の空に光が舞い降る 壊れない愛を抱えて君に届く

落日

病室から見る景色。片足だけの雛鳥のように歩けなくなった少女を歌う。

本当なら、まだあの景色を歩いていて…そして…と、
止まない後悔と悲しみに暮れる少女。
絶望と涙、幾度と続いた後悔。
周りを見渡し、気付けば誰もいなくなっていた。孤独の病室。
帰れない、戻れない景色を見る少女、諦めが何度も過ぎるものの、
痛みを堪え、病室の窓を飛ぶ。

「まだ飛べるかな」…、雛鳥が見上げるかのように倒れ込み、見上げた空は、落日。真っ赤な空。
血で染まった真っ赤な花の上で見上げる。雛鳥の少女。

知っている人は知っている「落日」。
そう、ryoの前身バンド、GULLETの隠れた名曲のひとつである。
テーマは、「リトライ」。スローバラードで、今思えば、
今の9GOATS BLACK OUTの現状を訪仏とさせるようなニュアンスを感じさせる。

原曲のデモは、同じGULLET出身であり、
かつ現在サポートを行っているドラムakiによるものからである。
GULLETのときよりテンポは落ちているものの、良い部分を抽出し、
当時無かったakayaによるピアノを混ぜ、昇華され、今回、
通販・会場盤のみ収録された、9秒の空白の後に続くボーナストラックとしてリリースされた。

私雛鳥 夢見ているの 窓の外を見つめて
私雛鳥 動けないのに 明ける空を見て泣いて

my evaluation


世の中では、聖なる日と呼ばれた2月14日に、ある作品がリリースされた。
ひとつひとつの楽曲の完成度が高く、形に出来うる力を出した、作品、「Black rain」である。
歌詞の見せ方、英詩でも描かれれることにより、さらに多くの人に響く様に作られたアートワーク。
9GOATS BLACK OUTとして、提示された作品として、期待を裏切らない作品となっている。

ありふれた音楽で常に扱われてきた「人の生死」、その先をどう生きるのかまでが描かれており、
ひとつひとつの物語を紐解くことで、この作品の在り方も変わる…何十回の視聴に耐えうる作品となっている。

強くオススメしたいのは、もちろん、「通販・会場限定盤」。「落日」を含めて聴いていただきたい。
ヴィジュアル系を知る者なら、一度は触れてほしいバンドです。本当に。