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deadman / デッドマン
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発売日:2001/11/21



drof facs

「らーららーらーらーらー」、何かのメロディを口ずさむ男の子。
ブランコを漕ぐ。…彼は男の子?本当に男の子?頭の中で何かがうごめく。





please god

眞呼の歌詞、ダークな歌い方に耳を傾けがちだが、
この曲の魅力は、aieの疾走感溢れる魅せ方、
そして映画の効果音のような演出を混ぜたロックナンバーであるところが肝だろう。

様々なギターエフェクトを唸らせ、サビでは一気に開放的になるサビ。
ライヴで聴くと気持ちよく、陰鬱とした空気を吹き抜くような爽快感がある。
しかし、歌詞は、絶望の淵に立たされた男に聞こえた声の物語である。

最も愛されたい人に見向きもされず、絶望に浸る俺が一人いた。
赤子を大切に抱くその人に俺は夢中なんだ。なのに一言も声を聞かない。

「何もかも終わる」、そう思っていたその時、光の中にある声が聞こえた。
俺には誰もが見とれる白い羽根があるらしい、俺は選ばれた花、選ばれた人間なんだ。

そう信じ空も飛べると、あの人の大切な赤子を抱き、高いところから飛び降りた、
結末は肉塊となり、赤子も屍のボールのようになった。

嘆く俺を埋める声だけが闇の中で聞きとれる、俺は腐りかけの花、選ばれた人間じゃなかった。
青い水、深い大地、この星が好きだった、愛するあの人は自分のことを憎んでいるだろう。
あの人の声も、言葉も、憎悪さえもこのまま聞くことさえできない。


good bye kiss me 愛してる 青い水も深い地も
good bye kiss me 憎んでる ただ君の声君の言葉で聞きたかった


溺れる魚

跳ねるようなリズムに合わせるように展開されるラップ調のヴォーカルライン。
低音による音圧がライヴを映えさせる。
溺れる魚とはこの主人公の「子供」である。歌詞の内容は「父による虐待」。
水槽で溺れさせられ、悪夢でさえも主人公を苦しめる。
神に縋るしか術を知らず、自責する母。
自責の果て、主人公に鋏を向ける。苦しみから救うために。


押し潰されてる自責に 神経は壊れ果てて
水槽ゼリー溺れてる 水槽ゼリー溺れてる
苦悩の果てに向けられたscissor そうだろmother


blood

跳ねるようなリズムとシニカルな歌詞、ライヴではテンポアップし、
やがてこの曲はdeadmanでライヴの最高潮となる曲と変化する。

blood、「ヴァンパイアフィリア(好血病)」の物語となる。
互いに血を与えあい、その身に異なる血を取り込む。
しかしやがて白血球などによる抗体が互いの内臓を蝕み、死へと至らしめる。
まるで吸血鬼が太陽に焼かれるかのように。


太陽がジリリジリリと悲鳴連れて 核を焼きはじめる
白い血がキリリキリリ 俺の内蔵身を枯らす

憧れていた 夢の続きを
安らかな世界へ 俺の手を握りしめて



桜と雨

知っている人も多い、deadmanの春限定の名バラード。
Fatimaでもライヴでカヴァーされた人気曲である。
切なくも馴染むサウンドと、眞呼のヴォーカルが会場を悲しい桜色に染める。
歌詞は短く視覚的にも美麗。しかし突き詰めていけば深い世界が入っている。

歌詞をよく見ると、桜と雨という曲名ではあるが、
主人公は「雲」に例えられている。
誰もが幸せだと思っている生活を送る、自分自身。
自由のように見えるが、様々なしがらみに拘束された「雲」。

未熟な精神がいつも愛する人を置き去りにし、遠い場所で愛する人の夢を見る。
まるで青い風に吹き動かされる雲。そんな自分に満足していた。

残された愛する人の場所には何一つ優しさは無く、温かみも無く凍えさせる。
雲から流れる自分勝手な冷たい雨がやがて桜である愛する人を傷つけていく。

何一つ守れず、何一つ残さず、傷つける、冷たい涙、雨。


降り注ぐ涙に 散って行く花
君の笑みも壊れていく
木々の隙間から また一雫
零れ落ちる数えきれぬ花びら


re:make

激しいサウンドと、頭のネジが取れたかのような演出とラップ調のヴォーカルを見せる眞呼。
ヘッドバンキング、モッシュと、deadmanのライヴで起爆剤のようなノリを見せる。

絶望の状況にいる男女二人。今日も薬の服用で夢を見て、現実逃避。
現実から夢の世界へ、自分の存在すべき場所をすり替えるためのリメイクが始まる。


physic 神経はバター 望む安楽死と同じ火葬
scrap 神経はバター 彼女さえ安楽死での火葬

白いドレスの横たわる血の海の少年
希望の地に辿り着くまで泳ぐ旅人



色別の亡い空虚

仄暗い空間の中、その中にサウンドと声が鳴り響く…そんな印象だ。
陰鬱、…いや、「幽閉」といったほうがイメージとして合うだろう。
どこかノスタルジックな印象さえ感じさせるギターサウンドも魅力的で、まさに「色別の亡い空虚」

脳の中にある自分という存在。自分がいると信じている世界。
しかし、それは頭の中で作り上げた世界で、そんな世界は本当は存在せず、
自分という存在でさえも本当は存在しない空虚の存在であることに気付く。

遠巻きに見ると小さな自分、脳の中で静かに、世界と自分という存在が、崩れ落ちる。


初めから安らぐ事等 思い込むだけ 求めた君はいない
初めさえ存在したのか 溺れる夢 現実に俺がいない


site of scaffold

dlof facsは、もう一人の存在。しかし現実の自分は「scaffold」
「色別の亡い空虚」でブランコを扱ぐ男の脳内で一人の人格が消える。そして鳴る狂気の慟哭。

眞呼のシャウトとサイコパスなバンドサウンド、
そしてエンドレスで流れる眞呼の「ラーララー」という声がより曲を狂気の色で輝かせる。





my evaluation


アルバムは「色別の亡い空虚」と1曲目、最後の演出がコンセプトで、
内包されている他曲はライヴでプレイされている曲かつ、人気曲で占められている。
このアルバムのほとんどが最後まで主流でプレイされており、「blood」「桜と雨」は、
deadmanの名刺的な曲ともいえるようになった。

今の見方なら、このアルバムは凄いんだけれど、あまりに人気曲が揃いすぎて、 deadman best的な印象がある。
当時リリースされたときを考えると…決して万人受けしないが、「deadmanです」と自己紹介されたような作品。

まとまりが無さ過ぎて個性がぶつかった作品。
全体を聴くというよりも他のdeadman作品と合わせて聞くとよい印象を受けるかな。

持っていない人も、中古店などで探して聴いてみるのもいいかも。
全体として音が粗いけど、やがてその粗さが心地よくなる。